【資産価値を気にする方へ】広さ、築年数の区切れ目で売却価格に差が出る理由とは?

中古住宅を購入する際、将来の資産価値を気にする方がとても増えたと感じています。

自分が住まなくなった後に売れるのだろうか、ということは誰しもが疑問に思うことです。

せっかく購入するなら資産価値が高い、または資産価値が維持される住宅を購入したいと考えます。

色々見て回った結果、2つの物件が気に入ったのでどちらかに決めたいけど、資産価値を考えるうえで気を付けるべきことは何でしょうか?

少なくとも、築年数・広さ(㎡)がある一定のラインを境に価格に大きな影響が出ることは知っておいてください。

具体的には、築年数でいえば1981年6月1日より前か後か。(いわゆる新耐震基準かどうか。)

広さでいえば、30㎡・50㎡を超えているかどうか。

本稿ではなぜこれら数値を境に資産価値が大きく異なるのか詳しく解説します。

中古住宅購入にかかる諸費用

中古住宅を購入する際、広告で表示されている販売価格(物件価格)以外にもお金が必要です。

不動産会社に支払う仲介手数料、住宅ローンを組む際に銀行に支払う融資手数料、登記を依頼する司法書士に支払う登記費用など、購入時には販売価格の7%前後の諸費用がかかります。

不動産会社から提示される諸費用(販売価格のおよそ7%)の中には税金も含めて計算されていることが多いです。

購入時にかかる税金は2つあり、不動産取得税登録免許税です。

そして、これらの税金には軽減措置が設けられております。

不動産取得税では軽減措置が受けられるかどうかによって税額が数十万変わってくることもあります。

登録免許税でも軽減措置が受けられるかどうかで大きく税額が変わります。

(詳しくはこちらのコラムをご参照ください)

軽減措置が使える物件と、軽減措置が使えない物件、2つの物件を検討した場合、どちらを選びますか?

同じくらい気に入っていて、販売価格も同じ2つの物件があった時、軽減措置が使える物件を選ぶのではないでしょうか。

これを売却する側から見れば、軽減措置が使えない物件を売り出す際にはやや割安感のある価格設定をしないとライバルに勝てないということです。

このように、税制の問題で売却価格に差が出てくるのです。

軽減措置が使えるかどうかは、築年数・広さについて一定のラインが決められており、それが1981年6月以降(新耐震基準)であり、50㎡以上ということです。

詳しい要件は先ほどの別コラムで詳しく解説してますのでぜひご確認ください。

住宅ローンの利用ができるヒト、できるモノ

不動産を現金で購入できる人は稀です。

一般的には住宅ローンを利用して購入します。

そのため、住宅ローンの利用が難しい人は不動産を購入する事ができません。

住宅ローンの利用が難しい人とは、過去に借入金の滞納があったり、現在も他から多額の借入をしていたり、安定した収入がない人です。

それでは、安定した収入がある人はどんな不動産でも住宅ローンが組めるのでしょうか?

住宅ローンを組むためには、ヒトとモノ、それぞれの要件が決まっており、モノ(不動産)が要件から外れてしまうと住宅ローンが組めません。

つまり、どんなに高収入・安定収入がある人でも、不動産に問題があると住宅ローンが使えないということです。

購入する人から見れば、「気に入ったんだけど住宅ローンが使えない物件なら仕方ない。別の物件を探すか」ということで、大きな問題ではありません。

一方で売る人から見たら、「エッ、僕の家は住宅ローンが使えないの?それだと現金で買ってくれる人を探すしかないってこと?」というとても厳しい状況に置かれてしまいます。

住宅ローンが使える物件と使えない物件、比べたときに選ばれるのは圧倒的に住宅ローンが使える物件です。

そもそも住宅ローンを組まないと不動産を買えない人がほとんどですから、住宅ローンが使えないというは致命的です。

そのため、住宅ローンが使えない物件は安くなければ売れません。

安くなくては、と言ってもちょっと安いくらいでは見向きもしてもらえませんので、激安というくらい安くせざるを得ないです。

そうならないためにも、住宅ローンが使えない物件はどんな物件なのかあらかじめ把握しておきましょう。

住宅ローンが使えないモノとは

一般的には下記のような物件は住宅ローンが使えません。

  1. 賃貸用、事業用の建物
  2. 法令に違反している建物
  3. 接道義務を満たしていない土地

住宅ローンとは、自分が住むために自宅を購入する目的に限定されており、投資や事業の目的で不動産を購入することはできません。

もし自分が転勤などで住まなくなって他人に貸し出した場合、賃貸中のまま売却しようとすると空室の時と比べて安くしないと売れません。

それは、買い手が住宅ローンを使えないためです。

投資用の物件は住宅ローンではなく投資用ローンでなければならず、住宅ローンと比べて金利が高いことや審査が厳しく、買い手が限定されます。

買い手が限定されるということで、販売価格にも大きく影響するということです。

また、住宅ローンでは違法に増築している建物を購入することもできません。

戸建ての中で、新築後に庭の一部に小屋を作ったり、テラスの一部を屋根付きにしてサンルームのようにしていることがあります。

そのままでは違法建築になりますので、売却時には撤去したうえで、買い手が住宅ローンを使える状態にしなければ売りづらいでしょう。

3つ目の接道義務とは、建物を建てるためには道路に2m以上の間口で接していなければならないというルールです。

2m未満の間口しかない土地には建物が建てられず、そのような土地には住宅ローンが使えません。

間口を広げるためには隣接地を買い増しするしかありませんので、解消するのは容易ではありません。

何とかなるだと、と安易に考えて購入すると痛い目にあいます。

これら3つのNG要件については売主も理解していることもあり、パッと見ても割安な価格で販売されております。

割安な理由を説明してもらえますので、買い手が全く理解せずに購入してしまったということはないでしょう。

問題なのは、これ以外にも金融機関ごとにモノに関する要件があり、あまり知られていませんが建物の最低面積、築年数についても一定のラインがあります。

例えばフラット35は建物面積の最低基準がホームページで公表されており、戸建は70㎡以上、マンションは30㎡以上が要件となります。

一方、公表されておりませんが、マンションでは登記簿で30㎡又は50㎡以上を要件にしている金融機関が多いです。

また、面積にかかわらず間取りがワンルームは不可としている金融機関もあります。

築年数については、1981年6月以前(旧耐震基準)を境に取り扱い可否を決めているようです。

以前は旧耐震基準のマンションでも取り扱いをしてたが、ここ最近になって取り扱いをやめた金融機関もあります。

これらの要件は金融機関の内規のようなもので将来変更される可能性がありますが、面積や築年数が要件になっていることは知っておいてください。

自分が購入する物件は一般的に住宅ローンが組みやすい物件かどうかというのは資産価値を考えるうえで重要なポイントです。

(詳しくは下記コラムをご参照ください)

住宅ローン控除が使えるかどうか

購入検討者が一番気にしているのが、住宅ローン控除ではないでしょうか。

住宅ローン控除の詳細についてはここでは触れませんが、新築年が昭和57年1月以降であること、登記簿面積50㎡以上、というのが主な要件です。

ここでも築年数、広さが要件となっていることから、このラインを境に税制メリットが受けられるかどうか変わります。

冒頭で解説した不動産取得税、登録免許税と同じように、税制メリットが享受できる物件とそうではない物件を比較検討した時、選ばれるのは税制メリットが享受できる物件です。

大規模マンションであればマンション内で複数の部屋が売りに出ることは珍しいことではありません。

その中に、面積が52㎡と48㎡の2つの部屋が売りに出ていた場合、買い手は52㎡を優先的に検討します。

住宅ローン控除が使えるためです。

もし私が48㎡の売り手にアドバイスをするとしたら、52㎡の部屋より少なくても住宅ローン控除分を値引いた価格設定にしないと売るのは難しいことを伝えます。

やはり住宅ローン控除が使える物件かどうかというのは資産価値に影響が出ます。

売却価格に差が出るのが本当に問題なのか?

ここまで、主に税制・住宅ローンの可否によって売却価格に差が出ることをお伝えしました。

特に税制については軽減措置が使えるかどうかは経済的負担に直結しますので、それによって売却価格に差が出ることは当然と言えます。

では、それをもって軽減措置が使える物件を選ぶのが正しいのかというと、そうではありません。

そもそも、中古住宅というのはそういう要素を加味して値段が付けられているはずだからです。

つまり、軽減措置が使えない物件というのは、使えないことを前提として中古市場に売りに出ているのです。

当然、同じような物件で軽減措置が使える物件と比べて割安な価格になっているはずです。

その割安な中古住宅を購入するわけなので、将来売却するときに割安な価格で売ることは問題とは言えません。

問題なのは、そのような物件が適正な値付けがされているのかどうか判断しづらいことではないでしょうか?

売り手としては少しでも高く売りたいという気持ちがあるのは当然のこと。

適正価格、というものがあったとして、適正価格で販売を開始しなければならないということはありません。

不動産は全く同じものは存在せず、1件1件がオリジナルな一点モノです。

それを周辺の似たような販売物件や過去の成約事例をもとに適正価格を推定しているわけです。

推定する人が異なれば適正価格も全く違う価格になることもあります。

不動産の売却をした経験のある人はお分かりになると思いますが、不動産会社に査定依頼をすると各社全く異なる価格を提示します。

買い手としては、売り手側の考える価格を基準に考えることをせず、買い手としての適正価格を把握することが必要です。

自分なりの適正価格を持ったうえで購入するかどうか判断すれば、高い物件を買っちゃった…という後悔をすることはなくなります。

将来の資産価値を推測することも大事ですが、現状の相場の中で割高な物件を買わないことの方が資産形成を考えるうえで有効ではないでしょうか。