日本では不動産登記制度があり、不動産の所有者は登記簿という公の帳簿に記録され、公開されています。
そのため、所有者が変更した場合には登記簿上でも名義を書き換える手続きが必要です。
それが登記手続きであり、不動産売買の際には専門家(司法書士)に依頼をして登記手続きを行ってもらいます。
登記手続きを専門家に依頼する、ということは費用が発生します。
その費用を中古住宅を購入するときの諸費用として予め見積もっておくのが、登記費用ということです。
一言で登記費用といっても、専門家への報酬部分、登記手続きにかかる税金部分に分かれています。
税金部分については減税措置もありますので、登記費用は複雑な構成になっています。
そこで本稿では登記費用の中身について詳しく解説します。
登記手続きで発生する税金
登記の際には登録免許税という税金を納めなくてはなりません。税率は登記の種類や原因によって異なります。
不動産において所有者が代わる原因とし、相続、売買、贈与などがあり、その原因によって税率が異なるということです。また、不動産といっても、土地と建物でも税率が異なります。
中古住宅の購入であれば、土地・建物の売買になります。
売買を原因とする所有権移転の税率の計算方法
税額の計算は、(不動産の価格×税率)となります。税率は、土地は1.5%、建物は2%です。
土地の価格が3,000万・建物が1,000万であれば、それぞれ45万・20万の税金となり、合計65万です。
税率1.5%+2%=3.5%、となると大きな負担です。この数字をみると、そういえば、仲介手数料も約3%だったな…と思い出される方もいらっしゃるかと思います。
仲介手数料は売買価格に対して約3%の手数料ですが、登録免許税は不動産価格に対して3.5%の税金です。
ここでいう不動産の価格とは、売買価格のことはではありません。購入時の諸費用~不動産取得税~のコラムで解説しましたが、固定資産税評価証明書に記載されている金額が不動産の価格となります。
そのため、固定資産税評価証明書を見ないと登記費用のうち、税金部分は算出できません。
登録免許税は所有権移転だけで済むかというと、中古住宅の購入際にはもう1つ別の登録免許税がかかります。
それが、住宅ローンを組むことにより、金融機関の担保設定(抵当権設定)のための登記手続きです。
融資を受けることによる抵当権設定の計算方法
あなたが万一住宅ローンの返済ができなくなってしまった場合、融資をした金融機関はお金を返してもらうため不動産を強制的に売却します。
強制的に売却する権利を確保するため、あなたが購入した中古住宅に抵当権という権利を登記します。
登記手続きをするということは、登録免許税が発生するということです。
税額は、(債権額×税率)となり、税率は0.4%です。
債権額とはお金を貸した金融機関から見た表現で、あなたからみたら借りたお金の金額です。
住宅ローンで5,000万を借りたら、(5,000万×0.4%)=20万円の登録免許税を納めることになります。
登録免許税の税率の軽減措置について
住宅(居住用家屋)を購入する際、一定の要件を満たすと税率が低くなることがあります。
本来、建物は税率が2%ですが、軽減措置により0.3%となります。(税金が85%割引になります!)
また、抵当権設定の税率も、本来は0.4%ですが、軽減措置により0.1%になります。(税金が75%割引です!)
一定の要件とは下記の通りです。
- 自己の居住用住宅であること
- 取得後1年以内に登記されたもの
- 床面積50㎡以上
- 1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅。それ以外は耐震基準適合証明書又は住宅性能評価書(耐震等級が1、2、3であるものに限る)が取れたもの、既存住宅売買瑕疵保険に加入しているもの
自分の居住用住宅であることになります。親が買った家に息子が住む、というのではダメです。
中古住宅の売買では取得と同時に登記をしますので、2.の要件は気にしなくても大丈夫です。
床面積50㎡以上、は登記簿上の床面積です。マンションの場合はパンフレット上の床面積と登記簿上の床面積が異なりますので注意が必要です。
建築年についても登記簿上の建築年になります。もし、昭和57年より古い建物の場合、いわゆる新耐震基準に適合していることの証明書が必要になります。
専門家(司法書士)への報酬について
司法書士が業務を行ったときの報酬については、各司法書士が自由に決めてよいことになっています。
日本司法書士連合会のホームページに掲載されている報酬アンケートによると、
- 所有権移転登記の報酬:50,000円~70,000円
- 抵当権設定登記の報酬:40,000円~50,000円
が平均値のようです。
これらの報酬(及び登録免許税)を負担するのは買主のため、買主がどの司法書士に依頼するかどうか自由に決めていい、というのが原則です。
しかし、不動産売買の実務では、所有権移転を行う司法書士は不動産会社の指定した者が行うことが多いです。
売主が不動産会社であれば、その不動産会社が指定します。売主が一般の個人であれば、仲介をした不動産会社が指定します。
また、抵当権設定登記は金融機関が指定した司法書士になります。これは住宅ローンを借りる条件といえますので、我慢するほかありません。
それもあって複数から見積もりを取って安い司法書士に依頼するということは難しいと考えてください。
登記手続きは失敗が許されないこともあり、取引関係者の見ず知らずの司法書士に依頼することはせず、普段から取引があり、安心して任せられる司法書士に依頼することになります。
登記費用の支払い時期、方法など
登記手続きを行うのは売買の最終段階、決済・引き渡し日です。
買主として残代金の支払いを行う日に、司法書士から登記手続きについて詳細な説明を受けます。そして、手続き書類に証明・捺印をして登記手続きを依頼します。
事前に登記費用の見積もりをもらっているはずですので、その場で振り込み、または現金で司法書士にお金を支払います。
支払うお金は司法書士への報酬と登録免許税を合算した金額です。あとは司法書士が登録免許税を納めてくれます。
都心部の不動産の売買では、固定資産税評価額が高いこともあり、登録免許税が高額になりことも珍しくありません。
特に、登録免許税の軽減措置が使えない場合、100万円を超える登録免許税を納めることもあります。
司法書士の報酬は所有権移転・抵当権設定を合わせても15万円前後ですが、登録免許税が100万になると、買主が支払う登記費用は115万円です。
登記費用には税金が含まれており、その大部分は税金であることを知らない人は、司法書士とはずいぶん儲かる商売だ、などと勘違いしてしまいそうです。
諸費用として登記費用を見積もる際の注意点
軽減措置が使えるかどうかは建物の要件の他に、自分が住むかどうかも関係しています。
そのため、不動産会社が作成した一般的な登記費用では軽減措置が使われているのかどうか必ず確認しましょう。
また、抵当権設定登記費用も含まれているのか、その場合の債権額(住宅ローンを借りる金額)はどのくらいか、それによって費用負担が変わりますので確認が必要です。
もし、どうしても自分の知人・友人の司法書士に依頼したいということであれば、早い段階で不動産会社に相談をして進めることがいいでしょう。
事前に登記費用の見積もりを作成してもらうために、固定資産税評価証明書をもらうことも忘れないでください。