固定資産税

中古住宅では、不動産会社から案内される諸費用について各種精算金という項目があります。

各種精算金の中身は、固定資産税・都市計画税や管理費・修繕積立金などです。物件よっては精算金合計が10-20万になることも珍しくありません。

そこで、これら各種精算金を当事者間で精算する根拠や金額について詳しく解説します。

なぜ当事者間で精算しなければならないのか?

形式的にいえば、契約書で決めたから、ということになります。

一般的には、契約書では引渡し日を境にして日割り計算で精算することを決めています。

(公租・公課の負担)

第12条 本物件に対して賦課される公租・公課は、引渡し日の前日までの分を売主が、引渡し日以降の分を買主が、それぞれ負担する。

  2 公租・公課納付分担の起算日は、1月1日とする。

  3 公租・公課の分担金の清算は、残代金支払時に行う。

 (収益の帰属・負担金の分担)

第13条 本物件から生ずる収益の帰属及び管理費、地代等各種負担金の分担については、前条第1項及   び第3項を準用する。

では、なぜこのような条項で精算するかというと、買主・売主間で不公平にならないようにするためです。

そこで、まずは固定資産税等について詳しくみていきましょう。

固定資産税等の納税義務者は誰になるのか?固定資産税等の精算金について

固定資産税等の納税義務者は毎年1月1日現在の所有者になります。

その年の納税のための納付書が4月ごろに自宅に届きますので、一括で支払うか、年4分割(第1期:4月 第2期:7月 第3期:12月 第4期:翌年2月)で支払います。

納税義務者は年途中で変わることはありません。その年に所有権を手放しても、1月1日現在の所有者は1年分の税金を納めなくてはなりません

固定資産税等は所有しているだけで課税される税金です。

それなのに、年の途中で所有者が変わっても1月1日現在の所有者が1年分の税金を納めることは、売買当事者間では不公平であるといえます。

極端な例ですが、1月2日から新所有者(買主)が住むことになっても、その年の1年分の税金は1月1日現在の所有者(売主)が支払うことになります。

その不公平を解消するため、引渡し日を境にして当事者間で精算することにしています。

あくまで納税義務者は1月1日現在の所有者にあります。

年4回の分割払いを選択していて、12月に引渡しをしたから、3期・4期は買主が支払う、ということではありません。引渡し日に関わらず、売主は1年分の税金を納めなくてはなりません。

精算方法は契約の取り決め通り、引渡し日の前日までを売主、引渡し日以降を買主の所有期間として精算します。

具体的には、買主の所有期間分の金額を売主に支払うことで精算となります。

1年の始まりに引渡しを受けると買主の精算金は多くなり、年末に近づくにつれて少なくなります。

なお、翌年は1月1日現在の所有者が買主となっていますので、自宅に届く納付書で固定資産税等を納めます。

マンションの場合は管理費・修繕積立金の精算金が発生する

マンションでは毎月管理費等がかかります。これも物件を所有することにより発生する負担金となりますので、当事者間で精算します。

固定資産税等と同様に引渡し日を境にして精算し、買主の所有期間分の金額を売主に支払います。

マンションの管理費は1か月ごとに管理組合(または管理会社)に支払うため、精算についても1年分ではなく、1か月となります。

例えば、1月11日が引渡し日だとすると、1月10日までの10日間は売主負担、1月11日から31日までの21日分が買主負担となります。

管理費等は当月に翌月分を支払うことが多いため、上記の例では1月分は売主が全額支払い済みです。そのため、買主が負担すべき21日分の管理費を売主に精算金として支払います。

そして2月分(1月に支払い)からは買主が支払います。

では、もし管理費等が滞納されている場合はどうなるでしょうか?

管理費等は税金ではありませんので、未納だからといって強制的に取り立てられるわけではありません。

滞納している売主が悪いのだから売主に請求されるだろう、と考える人が多いと思います。

しかし、マンションでは管理費等が未納・滞納されている場合、新所有者(買主)が全額支払う義務があります。(区分所有法第8条)

そのため、滞納分も含めて、売買の引渡し時に精算することになります。

滞納がなければ、引渡し月の1か月分を日割りで精算することで、売主・買主の所有期間に応じた分担となります。

もし、売主が10万円分の管理費等を滞納している場合はどうすればいいでしょうか?

事前に支払ってもらい滞納を解消してもらえればいいのですが、そのお金がないから滞納しているということです。

売買代金を滞納に充てることを考えているなら、売買代金を10万円少なく支払う、つまり、買主が10万円を代わりに支払うという精算方法もあります。

滞納している10万円は、そのままにしておくと新所有者(買主)に全額支払うよう督促がきますので、その分を先にもらっておくということです。

その他、本物件から生じる収益、負担金とは?

不動産を所有していることで生じる収益とは、賃借人からの家賃収入、土地に設置された電柱の設置料、携帯電話基地局の設置料、太陽光発電の売電収入などがあります。

負担金としては、借地権の場合の地主に支払う地代などがあります。

なお、負担金として水光熱費も含まれると考えられますが、電気・ガス・水道については使用者が個別で契約しており、引渡し日より前に契約を解約をし、新所有者(買主)が引渡し日以降に契約をするため精算対象に含めません。

火災保険も同様に売主・買主それぞれが加入しますので、精算対象ではありません。

購入時にかかる精算金はいくらぐらいを想定すればいいのか?

精算金の買主負担は、引渡し日が遅くなればなるほど少なくなります。

固定資産税等は年税額の精算のため、1月1日を起算日として12月31日に近くなればなるほど買主の負担は減ります。

マンションの場合の管理費等は1か月分を精算しますので、引渡し日が月末に近くなればなるほど買主の負担は減ります。

とはいえ、事前に引渡し日を確定することは難しいため、最大でも固定資産税等の年額+管理費等の1か月分と考えておけばいいでしょう。

各種精算金は所有期間に応じて負担すべきお金を当事者間で分配しているものなので、購入するためにかかる費用ではありません。

不動産取得税や登記費用、仲介手数料とは性格が異なりますが、購入のタイミングで少なくないお金が発生しますで資金計画の一つとして項目に入れていることが多いです。

いかがでしたでしょうか。

各種精算金についての理解は深まったのではないでしょうか。

他のコラムでは購入にかかる諸費用について詳しく解説しておりますので、ご興味ある方はそちらもぜひ確認してみてください。