納得!「管理費」「修繕積立金」の使い道とは
マンションを購入すると、毎月必ず管理費・修繕積立金を支払わなければなりません

金額はマンション・部屋の広さによって様々で、住宅ローンとは別に支払うことを考えると、家計に与える影響は小さくありません。

また、住宅ローンを完済した後、老後の生活を考えてもマンション住まいで管理費等の支払いが続きます

これらのランニングコストを考えると戸建ての方が割安なのでは?と思われる方も多いのではないでしょうか。

そして、車を所有している方であれば駐車場付き戸建てか、マンションで駐車場を借りるかを比較すると、ランニングコストの違いが決定的になります。

マイホームにかけるトータルコストなら戸建てが有利、というのも頷けます。

管理費等をコストと一言でまとめてしまいましたが、毎月支払っているお金は何に使われているのかご存じでしょうか?

「管理費っていうんだから、管理会社に支払っているお金でしょ?」

「修繕積立金は、将来の大規模修繕工事にかかるお金として積み立てているんでしょ?」

という理解をしている方には、ぜひもう少し詳しく知って欲しい!

特に管理費の負担金額はマンションによって大きく異なります。それは管理にかかるコストが異なるからです。

そこで本稿では管理費・修繕積立金が何に使われているのか詳しく解説します。

これを読めばお得なマンションかどうか判断できるようになる!かもしれません。

管理費の使い道

管理会社
管理費=管理会社に支払うお金、という理解は、半分正解で半分間違いです。

マンションの決まり事は管理規約で決められています。また、管理規約はマンション毎に作成するものなので、その内容は異なります。

国交省がマンション標準管理規約を使用することを推奨していることもあり、マンションによって大きく異なることは無いのですが、築年数が古いマンションは新築時に標準的なひな形が無いこともあり、独特の管理規約であることもあります。

そして、標準的な管理規約で決められている管理費の主な使途は以下の通りです。

1.管理員人件費
2.公租公課
3.共用設備の保守維持費及び運転費
4.備品費、通信費、その他の事務費
5.共用部分等に係る火災保険・地震保険、その他の損害保険料
6.経常的な補修費
7.清掃費、消毒費及びゴミ処理費
8.委託業務費
9.専門的知識を有する者の活用に要する費用
10.管理組合の運営に要する費用

管理会社に支払うお金で賄われているのは、1.3.7.8.です。
それ以外の費用は管理会社に支払っているものではありません。

マンションの規模や設備、年度によって異なりますが、火災保険料、水道光熱費、補修費はその年の管理費全体の支出の20-30%になることもあります。

管理費が高い=管理会社の委託費が高い、という単純なものではありません。

管理費の使途の内訳を知ることで、そのマンションのポリシーがわかるといってもいいでしょう。

例えば、管理会社に全てを委託するのではなく、管理人さんだけは組合で直接雇用しているマンションもあります。

管理人さんがコロコロ変わるより、気心の知れた人が長期間携わっていることが住人にとっては大きな安心感につながっていると思われます。

また、エレベーターの保守管理会社と直接契約をすることでメンテナンス費用を削減したり、定期的な植栽メンテナンス頻度を調整することによる費用削減に取り組んでいるなど、細かく見ると努力をしている管理組合かどうか判断できます

努力をしている管理組合というのは住人のマンション運営に対する意識が高く、長期的なビジョンを持っていることが多いと感じます。

終の棲家としてマンション購入を考えるのであれば、管理費の使途を確認してみることをおすすめします。

修繕積立金の使い道

修繕
その名の通り、マンション全体の修繕工事にあてるためのお金であることは間違いありません。

ただ、管理費の使途の中にも修繕に関する項目がありましたので、修繕に関しては以下のような区分になります。

管理費から出す修繕費=日常的な軽微な補修

修繕積立金から出す修繕費=長期的な計画に基づいて行う大規模修繕工事

国交省のガイドラインの中で、大規模修繕工事とは以下の通りです。

マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう。

つまり、修繕積立金は将来行われる大規模修繕工事に向けた、毎月の貯金という位置づけになります。

ここで疑問に思うのが、

・そもそも将来行われる大規模修繕工事とは、具体的にどのような工事なのか?

・そして、その工事は一体いくらかかるのだろうか?

その答えが、長期修繕計画書に記載されています。

長期修繕計画とは

疑問点
高額な工事を来年行う、ということが急遽決まったとして、そのお金をマンションの各所有者から一括で徴収するというのは大きな負担になります。

また、反対者が出た場合には工事そのものが実施できず、マンション全体の資産価値に大きな影響を及ぼします。

そのようなことがないように、長期修繕計画で将来予想される修繕工事等を計画し、必要な費用を算出し、月々の修繕積立金を適切に設定するために作成します。

作成にあたっては、国交省がガイドラインを作成していますので、ガイドラインに基づいた長期修繕計画であれば安心です。

一方で、ガイドラインに基づいて作成された長期修繕計画でも、想定修繕工事項目、工事周期、工事単価はマンション毎に異なります。

そのため、長期修繕計画の収支がプラスで推移するといっても、100%安心とは言えません。長期修繕計画の内容を把握して、どのようなリスクがあるのか判断しなければなりません。

なお、長期修繕計画ガイドラインにおける大規模修繕工事とは、全面的な外部足場が必要な外壁塗装と屋上防水等を同時に行う工事を指します。

ガイドラインを読み進める中で、私が気になったポイントは以下の通りです

想定修繕工事項目はマンション毎に異なること

耐震補強
例えば、排水管交換工事は高額な工事のうちの代表格ですが、長期修繕計画に含まれているかどうかは長期修繕計画を確認しないと分かりません

その計画が含まれていないのであれば、収支がプラスであっても将来の修繕積立金の値上げ又は一時金の徴収の可能性が想定されます。

また、いわゆる旧耐震マンションにおける耐震補強工事についても計画に含まれているかどうかはマンションによって異なります

このように、高額な工事項目が含まれているかどうかを確認せず、収支表のみ確認しても意味がありません。

既存マンションの場合、保管されている設計図書のほか、修繕等の履歴、劣化状況等の調査・診断の結果に基づいて作成されること。(5年毎に見直すことを前提にしている)

中古マンションを検討する際、最新の長期修繕計画が10年前のものである、ということは珍しくありません。

30年の長期修繕計画のうち、10年が経過していることになります。

過去10年間を計画通りに修繕してきたので、今後20年も計画通りになるはず、ということではないからです。

5年毎に見直すということは、その時の建物の劣化状況を踏まえて将来の修繕工事の工事費用を見直して修正することです。

ここ数年で物価が上昇していることから、工事費も大幅に上昇しています

これらを加味すると10年前の長期修繕計画をもって今後の修繕積立金の過不足を検討することは難しいと言えます。

長期修繕計画が作成されていないマンションや、長期修繕計画の作成日は古いマンションの場合、今後の修繕積立金の過不足を確かめる方法はないものでしょうか?

長期修繕計画ガイドラインの中でも紹介されている、独立行政法人住宅金融支援機構が提供する「マンションライフサイクルシミュレーション~長期修繕ナビ~」を利用することをおすすめします。

ここでは詳しく触れませんが、シュミレーション結果を確認することで今後の修繕積立金の過不足が把握できます

まとめ

相談風景
・管理費=管理会社への委託費、ではない
・管理費の使い道を知ることで、マンションのポリシーを知ることができる
・修繕積立金は将来の大規模修繕工事のための貯金
・長期修繕計画をみれば将来の工事計画がわかる
・長期修繕計画を作成していない、または古い計画しかないマンションもある
・修繕積立金の過不足を確認するシミュレーションツールがある


単に、管理費が高い・安い、という視点ではなく、もう一歩踏み込んで読み込んでみると気づきがあって面白いと思います。

また、修繕積立金は家計における長期の貯蓄計画に似ています。

とにかくお金を貯める、ということではなく、何のために・いつまでに・いくら必要なのかを明らかにして、その目標に向けて定期的に貯蓄を進めることになります。

もしお金が足りないと言うことが分かったら、支出を減らすか借り入れをするか、というのも修繕積立金と家計管理では共通です。

修繕積立金が不足するから検討できない、というのはちょっともったいない気がします。

将来の積み立て不足にどのように対応するのか想像して、積立金の値上がり幅を織り込んだうえで購入の判断をすれば良いのではないでしょうか。

とはいえ、初めてマンションを購入する方がシミュレーションをして判断することは難しいかもしれません。

数多くの中古マンションをみてきた知見を活かしたアドバイスをしておりますので、修繕積立金が気になるマンションがあった際にはぜひご相談ください。