需要と供給

昨日のコラムでは、現金で買う、ということを武器に値引きを迫ることは難しいことをお伝えしました。

それでは、不動産売買において現金で買うということは強みにならないのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。

現金で買うという強みが活かせるのは主に2つの場合です。

  • 売主が現金化を急いでいる
  • 物件の問題で住宅ローンが使えない

ところで、中古住宅を購入しようと考えているのは、そこに住みたいと思っている人だけではありません。

買い取った後、リフォームをして転売をすることを考えいてる不動産会社もいます。

ライバルがいる、ということを念頭に、現金で買うことの強みが活かせるのかどうかみてみましょう。

売主が現金化を急いでいる

事業資金に充てるため、もしくは住宅ローンの返済が滞っているため等、自宅を売却して現金化を急いでいる売主もいます。

とにかく「早く」「確実に」現金化することが希望です。

そのため、住宅ローンの決済まで待つことはできません。また、住宅ローンが否決されるリスクもあります。

そのような物件(売主)であれば現金で買うというのはとても大きな武器になります。

では、ライバルはどうなのでしょうか?

不動産会社は事業として不動産の購入を行います。現金で買うこともあれば、事業資金として借り入れをすることもあります。

どちらにしても、住宅ローンのように時間がかかるわけではなく、サッとお金を動かすことができます。

つまり、現金で買うライバルはとても多いのです。

そのため、売主が売り急いでいるからといって、現金で買う場合も極端に安くなることはないでしょう。

物件の問題で住宅ローンが使えない

住宅ローンが組める、というのは借入をする人の審査があります。勤務先、年収、家族構成、勤続年数など、長期に渡って滞りなく返済ができるのかどうか、金融機関は審査をします。

また、借入をするということは物件を担保に入れることになります。

万一、住宅ローンの返済が滞った時、金融機関は担保となっている不動産を処分して借入金を回収します。

そのため、借入金に対して一定の売却価格が見込める(担保価値がある)不動産かどうかを審査します。

このように、住宅ローンでは人に対する審査物件に対する審査があり、その両方が基準に達しないと借りられないということです。

もし、何らかの理由で物件に対する審査が通りづらい不動産があった場合、その物件を買うことができる人は現金を持った人だけです。

それだけだと、条件としては先ほどと同じでライバルとなる不動産会社がいるため強みを活かせそうありません。

しかし、大きく異なるのは、不動産会社が転売しようとしても、やはり住宅ローンが使えない、ということです。

転売時に住宅ローンが使えない物件は人気がありません。人気がない=転売が難しい物件に対しては良い価格提示はできません。

ライバルとなる不動産会社も手が出しづらいということは、買い手はかなり限られるということです。

ここで初めて「現金で買う」ということが武器になります。他に買い手がいない、というのは買主にとって有利な状況です。

価格は需要と供給によって決まる

不動産は全く同じものがありません(供給は限られる)。

個人が自宅として購入する場合は、通勤地への利便性、子供の学区など、自分の生活スタイルに合うかどうかを考えながら決めることになります。

一方、不動産会社の中には、中古住宅を購入後、リフォームして転売を事業としている会社があります。

事業として購入するため、個人的な好みがどうかというより、採算が合うのかどうかが購入の判断材料になります。

つまり、価格が安くなればなるほど、買いたいと考える不動産会社は増えるわけです(需要が増える)。

そのため、あまりに安い物件というのは何かしらの問題を抱えているということになります。

住宅ローンが使えない物件というのはその典型的なものです。

一般的にはこのような理屈を理解したうえで売主は価格を決めて売りに出しています。

(仲介の不動産会社がそのようにアドバイスしています)

そこから考えると、明らかに安く売りに出ている物件は何らかの問題を抱えているといえます。

その物件を買えるのは、現金で買うことができるあなただけかもしれません。