購入時にかかる諸費用の中で、特に金額が大きいのが仲介手数料です。新築マンションの購入諸費用では仲介手数料という項目がないことがほとんどにも関わらず、なぜ中古住宅を購入するときには発生するのだろうか。
しかも、仲介手数料は数百万円と、かなり大きな金額になります。それにもかかわらず、仲介手数料を支払う根拠や手数料の計算式、値引き交渉できるかどうかなど、知らずにサッと支払いを済ませている方も多いのではないでしょうか。
そこで、本稿では仲介手数料について詳しくみていきたいと思います。
なぜ仲介手数料を支払わなければいけないのか?支払いの根拠となる契約について
中古住宅を購入するとき、必ず不動産会社に問い合わせをすることになります。フラッと近所の家に立ち寄って、住んでる人に「家を探しているので売ってもらえませんか?」と言う人はいません。
多くの人はインターネットを使って家探しを始めます。CMでもお馴染みにSUUMOなどで検索して、興味がある物件があればSUUMOに掲載している不動産会社に問い合わせをします。
その後も、その不動産会社を通じて商談を進めることになり、無事に購入することが決まると仲介手数料を請求されます。
あなたが物件を購入するとき、売主とあなた(買主)の間で「この家を●●万円で買います」という約束をするのが売買契約です。それと同時に、不動産会社とあなたの間で媒介契約という契約も交わすことになります。
媒介契約とは、不動産会社(宅建業者)が不動産売買の当事者の間に立って、売買契約の成立に向けてあっせんすることを主な内容としています。
具体的な仕事の内容は、売買の流れに沿った
- 物件の紹介
- 売買の相手方との交渉
- 重要事項等の説明
- 売買契約の締結
- 決済、引き渡し
を行うことです。
買主の立場で考えると、欲しい物件が出たので、2.以降の仕事を依頼することが媒介契約となります。
そして、媒介契約には「不動産会社の媒介によって契約が成立した時に、報酬を請求することができる」となっているため、それが根拠となって仲介手数料の支払いが必要になるわけです。
仲介手数料の金額は決まっているの?値引きしてもらうことはできるの?
媒介契約に基づいて支払うというとが分かりましたので、仲介手数料の金額も媒介契約で決められているはずです。多くの人は、売買価格の約3%と思っているのではないでしょうか?
媒介契約書には、「宅地建物取引業法が定める上限の範囲内で報酬を申し受ける」と記載されています。
つまり、法律で上限が決められているが、金額は当事者間の合意で決まるということです。
報酬(仲介手数料)の上限は、いわゆる3%+60,000円に消費税です。
正確には下記のような計算方法になっていますが、これをまとめたのが「3%+60,000円」というわけです。
売買価格200万円以下の金額 | 100分の5 |
売買価格200万円を超え400万円以下の金額 | 100分の4 |
売買価格400万円を超える金額 | 100分の3 |
上限の範囲内で合意する金額が報酬になるため値引きという言い方は正しくありませんが、媒介契約書上では値引きすることができることになっています。
取引の実態としては、不動産会社から提示される諸費用明細の中に上限の金額で計算された仲介手数料が記載れており、媒介契約の詳しい説明もなく、売買契約書と一緒に媒介契約書にサインをすることになります。
そのため、仲介手数料について交渉する余地もなく取引が進んでしまうこともあり、請求された上限額を支払うことが多いのだと思われます。
もし途中で契約が解除された場合でも仲介手数料は支払わなければならないのか?
一般的な不動産取引の流れでは、手付契約、残代金決済・引渡、という2つのステップを踏みます。
当事者で取引条件が決まった段階で結ぶのが売買契約です。その際、売買価格の一部を買主から売主に支払うことになり、それを手付金といいます。契約の証拠金のようなものです。
売買契約を結ぶということは、その日以降、やっぱり買いたくないと言っても契約を取り消すことができないということです。
もし契約を取り消したいということであれば、一定のペナルティを支払って契約解除をすることになります。
契約解除したということは、中古住宅を購入することができなかったことになります。
一方、売主と売買契約を締結した日に不動産会社と媒介契約も締結していますので、仲介手数料を支払わなければならないのかどうか問題になります。
これも媒介契約の中で決まっていて、契約が成立した以上、報酬(仲介手数料)の請求権があります。つまり、契約解除しても仲介手数料を支払わなければなりません。
例外として、売買契約の中で、買主が住宅ローンを使って住宅を購入することを条件とし、その住宅ローンが否決されたため売買契約が解除されたときは、仲介手数料を支払わなくてもいいことになっています。
これらは媒介契約の取り決めに記載されていますので、気になる方は契約前にみせてもらうといいでしょう。
自己都合で契約解除した場合、ペナルティとして違約金等を売主に支払うことと、不動産会社に仲介手数料を支払うというダブルパンチになることに注意してください。
媒介契約に基づく報酬(仲介手数料)は成功報酬です
不動産会社の立場でみれば、どんなにたくさんの物件紹介をしても、一緒に現地見学に行っても、売買契約が成立しなければ仲介手数料がもらえません。
媒介契約に基づく仲介手数料は成功報酬のため、みなさんが売買契約を締結しない限り、お金を請求されることはありませんのでご安心ください。
そして、媒介契約の業務内容は、仲介手数料に含まれているということです。仲介手数料とは別に、契約書作成費用・物件見学代金などを請求されることもありません。
これは、媒介契約を締結した後かどうかは関係ありませんので、媒介契約締結前の物件探しの段階でも費用請求はされません。
不動産会社の人が無料で物件まで車で送り迎えしてくれるのは親切なのではなく、法律(媒介契約)で決められているからです。
仲介手数料が無料なのはなぜか?
不動産会社は仲介手数料以外のお金を請求できないのであれば、仲介手数料無料という会社があるのはなぜか?という質問を受けることがあります。
それに2つの形態がありますが、とちらの形態でもしっかり不動産会社は収益を上げています。
売主から仲介手数料をもらっている
不動産売買で不動産会社は媒介契約を売主・買主双方と締結します。
そのため、買主とは媒介契約の報酬が0円(無料)でも、売主から報酬が得られます。
仲介手数料は成功報酬のため、契約が成立しなければ1円にもなりません。当事者の一方を無料にしてでも取引を成立させることを優先しているのです。
不動産会社は売主である
不動産会社が売主の場合、物件を売ることで利益が得られます。つまり、自社の不動産を自分で売っているわけです。買主と媒介契約を結んで仲介手数料をもらうことが目的ではなく、自分で持っている不動産を、買った値段より高い値段で売って差益を得ることを目的としています。
この形態は新築マンションでは一般的です。大手不動産会社が売主として広告を出して集客しています。その場に他の不動産会社が仲介をすることはありません。大手不動産会社は自社で開発したマンションを売ることで利益を得ています。
また、中古住宅でも売主が不動産会社の物件があります。不動産会社が買い取った後、リフォームして販売しているのを目にしたことがある方も多いと思います。売主の不動産会社が直接販売をしている場合には仲介手数料がかかりません。
これら場合、そもそも売主と買主の間に不動産会社が入りませんので、媒介契約を締結することがありません。媒介契約がないということは、その不動産会社に報酬を支払う必要もありません。仲介手数料が無料、ではありませんが、実質無料というわけです。
どうしても欲しい物件があった時は気持ちよく仲介手数料を支払うこと
いかがでしたでしょうか。仲介手数料について理解が深まったのではないでしょうか。
中古住宅の取引に携わる不動産会社の多くは、仲介手数料が唯一の収益となっています。そのため、その仲介手数料の支払いを渋ったり、値引きしてもらおうとすることは、不動産会社にとってはとても迷惑なことなのです。
あなたが唯一の買主で、だれも他に買主がいない状況であれば不動産会社も値引き交渉に応じてくれるかもしれません。
しかし、他にも多くの買主候補がいるのであれば、値引きを要求してくる買主に誠意をもって対応してくれるかどうか…
自分の条件にピッタリの素敵な物件を紹介してもらったときには、気持ちよく仲介手数料を支払うことをおすすめします。
誰だって、自分の仕事の対価を値切られたら、仕事そのものにケチを付けられたと思っていい気持ちはしないですよね。