手付金の支払いと契約成立の時期について~手付金の準備・支払いは慎重に~
中古住宅の売買契約書では、次の通り決められております。

・買主は、売主に対し、手付金を本契約締結と同時に支払います。

契約締結と同時、とありますので、署名捺印の直後に現金で支払うことを想定しています。

契約書の署名捺印だけ先に行い、後日手付金を支払うということは認められません。
(手付金を後日支払うことを当事者が合意すれば問題ありませんが、仲介をする不動産会社はそのような合意を認めたがらない傾向にあります)

手付金は売買代金の10%前後としていることが多く、普段はあまりみない額の現金を準備しなければなりません。

それなら、契約直後に振込で支払うというのはどうでしょう?

振込の場合、送金しただけでは支払ったことにはなりません。受け取る側の口座に入金がされた時点で支払いが完了したことになります。

送金から相手方の口座への入金まで時間がかかることや、窓口での受付が15時で終わってしまうこともあり、振込送金で支払う場合は事前の準備がかかせません。

いよいよ契約、という段階まできたのに、最後の最後でつまづいていしまわないためにも、手付金の授受の方法は細かく仲介会社に確認したいものです。

そこで本稿では手付金の準備・支払いについて事前に確認するべきポイントを解説します。

現金の出金には1日の限度額がある

銀行
銀行の窓口で出金するのであれば問題ありません。

しかし、ATMでは1日に引き出せる限度額が決められています。

最近では銀行の窓口が予約制となっていたり、混雑しているため、近くのATMで済ませようと考えて、契約前日まで何の準備もせずにいると、限度額の問題で50万しか準備できなかった、ということがあり得ます。

銀行の窓口で出金する場合でも、しばらく使っていないので銀行印がどれか分からない…ということも。

なるべく現金を家に置いておきたくない、という心情から、契約日前日に現金を準備しようとする人が多いようです。

せっかく契約日が決まったのに、手付金が準備できなかったので契約日が延期となってしまった、なんてことにならないように、余裕を持って準備しましょう。

ネット(アプリ)による振込手続きにも1日の限度額がある

現金の支払いではなく、振込の支払いであれば限度額を気にすることはなさそうに思われます。

確かに、窓口で送金するのであれば限度額はありません。

一方で、冒頭でも触れたように窓口は営業時間が決まっていることや、いつ入金となるのか分からないことから、窓口での送金を利用することは難しいでしょう。

そこで、振込で支払う場合はネット(アプリ)を使って送金することになります。

多くの金融機関ではスマホを使ったネット送金ができること、また送金した直後に相手方に入金されること、そして土日でも手続きができるためとても便利です。

これなら現金の準備もいらず、契約書に署名捺印の直後にネット送金をすれば手付金を支払うことができます。

ただ、ここでも事前準備が必要です。

ネット送金は1日の振り込み限度額が設定されています。

署名捺印も終わって、いざ振込!

手付金500万円を振り込もうと思ってアプリを操作していたら、上限額オーバーということにその場で気づいた…ということも。

高額な振込をしたことがない人も多く、普段ネット送金を使っている方でも事前に確認して上限額を引き上げておきましょう。

もし契約時に手付金の支払いができなかったらどうなるの?

疑問点
売主・買主の都合を合わせることから、契約は平日の夜、または土日に行われることが多いようです。

土日に契約をする場合、金曜日までに手付金を準備すればいいかと思ってギリギリまで準備を怠っていると、1日の限度額の関係で手付金の支払いができないこともありえます。

そうなると、金曜の夜、または土曜の朝に「限度額の問題で手付金が準備できませんでした。どうすればいいですか?」という話を仲介会社にすることになります。

ここから先は仲介会社の仕切りの問題ですが、売主・買主に契約日に予定を空けてもらっているため、予定通りの日にちに集まって契約手続きを行うこともあります。

ただし、契約締結と手付金の支払いは同時になるため、契約書の日付は翌営業日としておき、翌営業日に手付金を支払ってもらうことにします。

日曜日が本来の契約日であれば、翌日の月曜日を契約日として先に書類の記入を済ませてしまうわけです。

そして、月曜日に手付金の入金が確認できた時点で契約成立となります。

契約書類に記載される日付は月曜日です。

これであれば、契約手続き日(日曜日)を延期することなく進められます。

とはいえ、手付金を振り込まない場合はどうなるのか?という問題や、日曜の手続き後に、当事者のどちらかがやっぱり契約したくないといった場合はどうなるのか?という問題があります。

こうなると大変ややこしいため、先日付の契約書取り交わしはおすすめできる対処方法ではありません。

ここは潔く、別日を設定して再度集まって契約をするのがいいのですが、それまでの間で相手方の気持ちが変ってしまうこともあり得ます。

それであれば、いっそ先日付で契約書を取り交わしてしまったほうがいいかもしれない…

こうならないためにも、契約日が決まったらすぐに手付金の支払い方法・準備を確認しましょう。

なお、ここでは詳しく触れませんが、契約は当事者の署名・捺印により効力が生じ、手付金の支払いは契約成立の必須要件ではありません。

そのため、手付金の支払いがなくても契約は成立し、手付金の支払いの有無にかかわらず契約をやめる場合には契約書に基づき解約ペナルティが発生することに注意してください。

まとめ

・手付金の支払いは契約締結と同時に支払うことが必要です。
・同時とは、署名捺印の直後です。
・振込送金の場合は、相手方への入金を持って完了となります。
・ネット送金、ATMによる出金は1日の限度額があります。


初めて中古住宅を購入する際、どのような書類のいつ準備するのか、契約時に必要な持ち物は何か?など、仲介会社から細かな案内があるため、言われたとおりに進めれば問題ない、という感覚になってしまう人は少なくありません。

本稿でご紹介したケースは、お恥ずかしながらいずれも私が実際に体験したことです。

お客様ご自身で分かっているだろう、ということを確認せずに進めた結果、契約日を延期するという最悪の結末になってしまいました。

不動産取引とは思いもよらないところに落とし穴があります。

それでも、多くの取引を経験している者であれば防げるトラブルも多くあります。

プロの目からみて、不動産取引の落とし穴を事前に塞ぐようなお手伝いをしておりますので、お気軽にご相談ください。