知ってますか?自宅を活用した資金調達!!リ・バース60

年を重ね、シニア世代になってからマイホームを買い替えたい、高齢者施設に入ろうと考える方が増えています。

30年前に購入したマイホームが老朽化してきたこともありますが、子育てが終わり、夫婦だけで過ごすならもっと小さくても利便性の良い立地に引っ越したい、手間がかからない住まいが良い、といったことが理由だと思われます。

一方で、自宅の売却価格と購入に当てられそうな自己資金を計算すると、どうしても希望する条件の物件には手が届かず断念される方もいらっしゃるのではないでしょうか?

長生きのリスクがあるため、ある程度余裕を持った預貯金がないと不安で、まとまったお金を買い替えに当てられないという話もよく聞きます。住宅ローンを利用する手もありますが、短い返済期間では毎月の返済金額も大きく、徐々に預貯金が減っていくという心理的負担から検討する方は少ないです。

そんな方に利用を提案したいローンが「リ・バース60」です。

これは住宅金融支援機構の商品で、各金融機関が取り扱っています。

(金融機関によって条件が異なります)

今回、リ・バース60の商品内容、活用方法を見ていきたいと思います。

リ・バース60の商品概要

60歳以上の方が、現在お住いのマイホーム又は、これから購入する物件を担保に、住宅購入・リフォーム・高齢者施設の入居一時金等に使うためのお金を借りることができます。

ポイントは、

  • 60歳以上という年齢制限がある(50歳以上でも使えますが、詳細はのちほど)
  • すでに持っている物件だけでなく、これから購入する物件も担保にできる
  • 資金の使いみちが決められている(高齢者施設の一時金にも使える)

一般の住宅ローンと比べ、特別変わった条件ではないですね。

リ・バース60最大の特徴は返済方法と返済期間です。

返済は、利息のみ毎月支払い。元金は融資終了時に一括支払い。

例えば、500万円を金利3%で借りたとしたら、毎月の返済は12,500円です。

(年間利息:金利3%✕500万=150,000円)

住宅ローンとして借りた場合、元金も返済していかなくてはならないため返済期間によっては大きな負担になります。それに比べて利息のみの返済となるため、負担が軽いという特徴があります。

返済期間(返済終期)は、利用者が全員死亡したときです。

ご夫婦が死亡したときに元金(先程の例だと500万)を一括返済します。どちらか一人でも生きている限り元金の返済は不要です。

つまり、夫婦が生きている間は利息のみ支払い、死亡後に相続人が元金を一括返済するという事になります。

そうか・・・

子どもに負担が残るのか・・・

そんなローンは使えないよ・・・

ところで、リ・バース60で借りられる限度額は、資金の使いみちによって異なります。

新規物件の購入であれば5,000万、高齢者住宅の一時金であれば1,500万です。

ただし、担保として提供する物件の「評価額✕50%(50歳以上60歳未満は30%)」以内であることが必要です。

つまり、自宅の評価額が2,000万円とされた場合、1,000万円が借入限度額になるということです。

リ・バース60は元金一括返済のときに相続人(子ども)が担保物件を処分することにより返済することを想定しています。そもそも、評価額の半分までしかお金が借りられませんので、担保物件が多少値下がりしていても物件売却金額が元金を下回ることは考えづらいということです。

とはいえ、65歳で借りて、長生きして95歳で死亡したとしたら30年・・・

30年経てば不動産の価格も大きく変化するかもしれない・・・

子どもに負担が残る可能性があるのであれば、やっぱり利用しづらいよな・・・

金融機関によっては、ノンリコース型のリ・バース60を取り扱っています。

担保物件の売却代金が残債務に満たない場合、不足する金額を相続人が負担するかどうかによって

  • リコース型:負担する
  • ノンリコース型:負担しない

となります。

つまり、ノンリコース型の場合、担保物件を売却して元金が返済できなくても、相続人が追加負担する必要がないのです。

これなら安心して利用できるのではないでしょうか。

※その他の条件として、担保物件は新耐震基準に適合していなくてはならないとしている取扱金融機関もあります。金融機関によって取扱条件が異なりますので利用される際は比較検討しましょう。

リ・バース60の活用方法

高齢者住宅へ入居するためにリ・バース60を利用することを想定してみましょう。

つなぎ融資としての活用

入居一時金を払うお金がない、払ってしまうと預貯金が少なくなってしまうので不安、といった理由から利用するものだと思われます。

それであれば、借りるのではなく売却して資金を得るプランも検討できそうです。

それには、借入にかかる諸費用と、売却にかかる諸費用を比較検討することも必要です。

一方で、売却資金を高齢者住宅の入居金に当てようと考えている場合には、リ・バース60を活用するメリットがあります。つまり、つなぎ融資のような形で利用できるということです。

売却を先に決めて高齢者住宅の入居タイミングに合わせて引き渡しができればいいのですが、同時にタイミングよくできることは稀です。

焦って売り急いでは安く売らざるを得なくなり、売るタイミングで気に入った高齢者住宅に入居できないことになってしまってはその後の生活の質が落ちてしまいかねません。

そこで、リ・バース60を利用して高齢者住宅に入居して、その後空家として自宅を売却するプランが立てられます。所有者が居住している物件より空家の方が高値で売れることも期待できます。

賃貸用不動産としての活用

しかし、思うように売却が進まなかった場合、自宅をどう活用すればいいでしょうか?

利息の支払いは続きますので、長期間売れないならば安くてもいいから売ってしまいたいと思われる方もいるかもしれません。

リ・バース60では、自宅(担保物件)を賃貸することが認められています。ただし、3年以内の定期借家契約であることが条件です。

(定期借家契約とは予め契約満了により更新をしないこと約束して賃貸する契約です。一般的な賃貸借契約では2年毎に更新をする事としており、貸主からは特別な事情がなければ更新を拒むことができません。定期借家契約は更新が無い契約ですが、更新のタイミングで再契約することができます。そのため、借主は必ず退去しなくてはならないわけではないのです。)

両者合意のもと、引き続き契約を結ぶ(3年以内の定期借家契約)ことができますので、売却から賃貸資産に切り替えて長期間保有することも選択肢として検討できます。

リ・バース60は借入期間中は利息のみの支払いとなるため、賃料と利息の差額はそれなりの収入になるのではないでしょうか。

元金返済が必要な不動産担保ローンを利用した場合、月々のキャッシュフローで考えると手残りは多くありません。リ・バース60を利用することで年金以外の安定収入が確保できることは大きなメリットです。

担保物件を賃貸用資産として活用できる、という特徴に目を向ければ、親から相続した空家のリフォーム費用をリ・バース60で借りて、賃貸運用するということもできます。

適切なメンテナンスが実施されている賃貸物件であれば、相続人が自己資金で元金一括返済をして物件を所有することも選択肢として検討できます。

まとめ

平成30年5月18日 住宅金融支援機構よりリ・バース60の利用実績が公表されました。

  • 利用者の60%は年金受給者
  • 資金使途の40%は新築マンションの購入
  • 融資額の平均は1,691万円
  • 毎月返済額の平均は3.5万円
  • ノンリコース型は全体の61%
  • 利用地域の1位は神奈川県(全体の16%)

リ・バース60のメリット・活用方法を見てきましたが、デメリット(リスク)もあります。

それは、元金返済が進まない(ない)ため、利息の負担が大きいということです。借入期間は長期に渡りますので、その期間の利息返済総額はとても大きくなります。リ・バース60も借入になりますので、他の借入と同じで返済計画や借りたお金の使いみちをよく考える必要があります。

他の手段で借入が回避できないか、もっとよい条件の借入先がないのか、という基本的な考え方をおさえたうえで、リ・バース60も選択肢の一つとして考えたいものですね。