FP×行政書士二刀流の専門家が教える!個人間売買の注意点
売買の相手先が決まっている場合、不動産業者に依頼せずとも当事者間で不動産の売買を行うことは可能です

トラブル防止のため不動産業者の利用をお勧めするような記事も見かけますが、本当に必要なの?と思っている人も少なくないでしょう。

不動産業者に依頼をすると仲介手数料を支払わなければなりません。

知人・友人など取引の相手方がよく知っている人であれば不動産業者に依頼するメリットは少ないのではないかと思われる方もいらっしゃいます。

そこで本稿では中古マンションを不動産業者に依頼せず、当事者間で売買を完結させるために必要な書類作成方法や注意点などを解説します

これを読めば不動産業者が間に入ったときでも、どんな点に注意すればいいのか理解できるようになります。

買主が住宅ローンを使う場合

当事者間売買を進めるにあたっての前提があります。

それは、買主は住宅ローンを使わないということです。

もし住宅ローンを使わないと購入できない場合、当事者間売買は諦めてください。

多くの金融機関では不動産業者が間に入らない取引に対して住宅ローンを扱っていないためです。
(親族間売買であれば住宅ローンを扱っている金融機関はあります。)

また、当事者間売買で住宅ローンが使えたとしても、本承認で否決された場合の対応、スケジュールの調整、決済日の段取りなど、トラブルになる要素が満載です

できないことはないが、トラブルになるリスクが高いため、買主が住宅ローンを使う場合は不動産業者に依頼することをお勧めします。

売買契約書は業界団体ひな形書式を利用する

どうやって手に入れるのか?というのが最初のハードルです。

不動産業者に知り合いがいれば、お願いすればもらえるかもしれません。

ひな形書式はそれぞれの業界団体ホームページの会員サイトから無料でダウンロードできるため、不動産業者に損はありません。

(間違っても、ネット検索して上位に出てきた無料書式を利用することのないように)

不動産業者の知り合いなんていないよ、という場合が問題です。

その場合、登記を依頼する司法書士に相談してみましょう。
(登記の依頼についてはこの後に詳しく説明します)

不動産登記に慣れた司法書士であれば多くの売買契約書を持っています。

登記を依頼することもあるので、相談に応じてもらいやすいと思います。

なお、細かいですが業界団体のひな形書式には売買契約書の他、物件状況報告書(告知書)と設備表を作成することが盛り込まれています。

これらの書式も手に手に入れないと全体のつじつまが合わなくなります。

面倒であれば該当の条文を削除する方法もありますので、当事者間で要相談です。

なお、国交省のサイトにはひな形書式が掲載されていますので、それを使うのも手です。

登記は専門家(司法書士)依頼する

労力とリスクを考えると、司法書士に依頼することをおすすめします。

よくある勘違いとして、司法書士が入ると登記費用がかかる(高い)という思い込みがあります。

登記費用というのは税金(登録免許税)と司法書士報酬の2つの合計です。

そのうち、司法書士の報酬は10万前後で、他は税金となります。

自分で登記申請をしても税金は必ず同じ金額かかりますので、司法書士の報酬分が節約できるだけです

労力を考えると司法書士に依頼する方がコスパが良いといえます。

それに、当事者間売買で何か不安なことがあれば相談にものってもらえて頼りになります。

マンション管理会社(管理組合)への届出が必要

登記申請を行っても、管理会社が管理している所有者名簿上の名義は変わりません

そのため、区分所有者変更届、管理費等口座変更届の2つの書類の提出が必要です。

不動産業者が間に入る場合は書類の手配から提出まで代わりにやってもらえますが、当事者間売買ではそうはいきません。

売主(現所有者)が管理会社または管理人さんに依頼して書類を取り寄せます。

提出日は登記申請日(所有権移転日)です。

なお、口座の変更には数か月かかることが一般的のため、所有者が変わっても管理費等は旧所有者の口座から引き去られてしまいます。

その点も予め確認して、決済日に当事者間でお金の清算を行いましょう。

重要事項説明書は作成されない

不動産業者が間に入ることで、重要事項説明書の説明を受けることができます

中古マンションであれば主に管理規約の内容、全体の修繕について、管理組合の会計がポイントになります。

重要事項説明書の作成がなくても、総会議案書・議事録、管理規約を所有者から見せてもらえれば概ね把握ができます。

とはいえ、今までこれらの資料を見たこともない人では読み込むことは難しいかもしれません・

当事者間売買にはリスクがある、ということでいえば、買主が物件のデメリットを把握できないことがリスクと言えます。

領収書の準備、印紙を買う、評価証明書を取得する…雑務が盛りだくさんあります

不動産業者が行ってくれる事務作業は意外に多くあります。

管理会社に提出する区分所有者変更届等を準備してもらうこと以外に、次のようなものがあります。

・手付金、残代金、各種精算金の領収書を作成する
・売買契約書を2部準備して、印紙を買う
・登記に必要な固定資産評価証明書を取得する
・引渡しが完了したことを確認する書面を作成する
・カギ交換が必要であれば業者を手配する
・不要な荷物を処分するのであれば、処分業者を手配する
・住宅ローンでフラット35を使うのであれば適合証明書を取得する
・住宅ローン減税、登記費用の軽減措置のための耐震適合証明書を取得する


探せばもっとありそうですが、これらの事務作業を当事者間売買ではどちらか漏れなく行うことが必要です。

仲介手数料にもよりますが、事務手間を考えたら不動産業者に依頼した方がいい場合もありそうです

まとめ

当事者間売買のメリットは仲介手数料の支払いが不要になることです。
一方で、不動産業者が担ってくれた業務を誰かが代わりに負担しなければなりません。

また、当事者間売買でリスクが大きいのは、売主より買主です。

もし私が買主の立場でアドバイスを求められたら、

1.自分で物件について調査して理解できること
2.事務手間が大きな負担ではないこと
3.相場より割安で買えること
4.住宅ローンを使うメリットがあまりないこと


がポイントになると伝えます

仲介会社に仲介手数料を支払うよりも割安に、でもしっかりサポートしてもらって安心して取引がしたいという欲張りな方からのご相談をお待ちしております。