マンションに住んでいると、毎日のように不動産屋さんのチラシが投函されているのではないでしょうか。
多くのチラシは「探している人がいます」とか、「こんな条件で探してます」というもので、売却を考えている人はぜひ問い合わせを、という結びになっています。
業界ではそれを「求むチラシ」という呼び方をしているとかいないとか…
売りたい人を集めるための営業手法の一つがチラシ配布ということで、賛否両論ありますが一向に投函されるチラシが減らないことを考えると費用対効果が高いと想像できます。
チラシの作成から投函までで2つくらいブログ記事が書けてしまうくらい奥が深く、私自身多くの体験をしてきましたが、本稿ではその先の物件査定の実態についてお話したいと思います。
営業担当の悩みは「査定価格」ではありません!他社がいくらと伝えているのか知りたいのです。
常識的に考えると、営業担当の最終目的はお客様に満足いただける価格で売却してもらうということになります。しかし、残念なことに実態は少し違うようです。
売れるかどうかにかかわらず、まずは不動産を売りたい人を集めるのが営業担当の仕事(目標・ノルマ)です。そのため、正確な査定価格を提示することよりも、それなら売ってもいいかも、と思ってもらうことが最優先となります。
安くてもいいからとにかく売りたい、という人は稀です。愛着のあるマイホームを売却するとき、所有者は市場価値よりも高い価値があると認識しているものです。
それなのに、そういった想いを一切汲んでくれず、形式にこだわった査定価格を提示されても誰もその営業担当に依頼しようとは思いません。
また、査定を依頼しているのは1社だけではありません。売主様は2-3社に声をかけて複数社から査定価格の提示を受けることが一般的です。
理論武装して大真面目に低い査定価格を提案する営業担当より、実際よりも少し高いかもしれないけど良い評価をしてくれる営業担当の方が好感が持てるものです。
もちろんそういう売主様の事情は営業担当も心得ております。
だから、査定価格というのは市場価格でも売れる価格でもなく、売ることを任せてもらえそうな価格になります。売ることを任せてもらうことを媒介契約を取る、といいます。
営業担当の目標は媒介契約を集めることです。他社が提示している査定価格よりも低くならず、高くなりすぎない絶妙な価格を提示することで媒介契約を取ることを目指しています。
私が営業担当として駆け出しのころ、指導していただいた先輩は査定書を3つ作成して面談にあたっていました。3つの査定書は価格が異なります。話しの流れでどの査定書を提示するか決めていたわけです。
営業担当としては優秀で素晴らしい手法だと褒められるかもしれませんが、顧客からみたらどうかは言わずもがなです。
こういった話をすると、「業界の裏側が良くわかりました・ふんふん」といってくださる方もいれば、「でも。売れない価格の売りたい人集めてどうするわけ?費用対効果悪いよね?」と批判的な視点で質問をぶつけてくださる方もいらっしゃいます。
そんな批判的な視点の質問の回答を、次回のコラムネタとしたいと思います。