漏水の責任は誰が負うの?
中古マンションを検討する際、排水管の状態・修繕状況を確認することが大切です。

排水管の老朽化は漏水被害に直結するため、自分が被害者になることや、階下への漏水によって加害者になってしまい、多額の復旧費用の支払いが発生することになりかねません。

とはいえ、漏水の場合には保険で復旧費用が賄われるので経済的な負担は少ないと思い込んでいる人もいらっしゃるのではないでしょうか?

賃貸住まいの際には保険に加入していれば加害者になっても問題ない、というのが一般的な認識だと言えます。

それもあって、所有者として住宅ローンを組む際に火災保険に加入しているのだから漏水の加害・被害は気にしなくてもいいのでは、と思っていませんか?

しかし、保険に加入していたとしても補償される範囲は限定的で、賃貸で入居している時と所有者としての責任は大きく異なります。

責任の範囲を明確に理解することは、中古マンションの将来の漏水リスクに適切に対応できるとともに、危ないマンションかどうかを見分ける力になります。

そこで本稿ではマンション排水管の構造や保守管理の責任の範囲について解説します。

天井裏・床下の配管の構造

マンションは専有部分と共用部分に分かれています。

排水管概略図でいえば、
・共用配管
・継手
・躯体共用部分です。
これは全てのマンション共通です。

共用配管とはマンションの最上階から1階まで貫通している長い配管です。
その共用配管に向かって各部屋の排水管をつないでいます。

配管の設置方向を指して、竪管(たてかん)、横引管(よこびきかん)ともいっており、それぞれ責任範囲が決められています。

竪管は共用部分、横引管は専有部分です。

ここで問題になるのは、横引管の経路によって管の責任範囲が異なることです。

スラブ(躯体)を跨るかどうかによって責任範囲は異なる~スラブ上なら専有部分~

スラブとは天井・床の躯体部分を言います。

あなたの部屋が赤枠の上階だったとします。
専有部分は躯体の内側ですので、まさに赤枠の部分です。

もし、横引管が下記のような床の下でスラブの上に沿って共用配管に繋がっている場合は、横引管は専有部分となり、所有者が管理する責任を負います
専有部分ということは、老朽化していれば自分で交換工事を行わなければなりません

また、横引管の老朽化によって漏水が発生した場合、階下の復旧費用はあなたが負担しなければなりません

階下の復旧費用については賠償責任保険に加入して入れば保険金が支払われます。

ただ、漏水箇所の補修(横引管の補修)費用は火災保険・賠償責任保険の補償対象外ですので、修理費用は自己負担となります。

そのため、スラブ上配管のマンションを購入する際には床下の横引管の状態を確認して、新しく配管工事を行うかどうか検討することがポイントです。

スラブ下配管の責任の範囲

マンションによってはスラブを貫通して、階下の天井に沿って横引管を共用配管に繋いでいることもあります。

これをスラブ下配管といいます。

スラブ下配管のマンションで、あなたの部屋の天井裏にある配管は上階の配管ということです。

では、この場合の横引管も専有部分のため所有者が管理をしなければならないのでしょうか?

あなたが階下の天井の横引管を管理・修繕することは現実的には不可能です。
(なぜなら、自由に部屋に階下の部屋に入って天井を開けられないのですから)

そのため、裁判所の判例もあってスラブ下配管は共用部分という認識が一般的です。

つまり、責任の範囲は下記の図の通り分かれることになります。
躯体(スラブ)から上の部分(赤い箇所)、実際に所有者が自分の範囲で保守・交換可能な部分が専有部分となります。

躯体に埋まっている箇所も含めて、階下の天井から共用配管までは共用部分です。(青い箇所)

このような責任範囲にすることで、自分で交換できる箇所は自分の責任、ということが明確になります。

中古マンションを検討する際、スラブ下配管の場合でも配管の状態を確認して、交換工事を行うかどうか判断することがポイントになります。

スラブ下配管マンションの漏水時の責任

配管
スラブ下マンションで天井から漏水があった際は発生箇所によって保険適用の可否、復旧費用負担者が決まります。

・上階の専有部分に原因があった場合
排水管の老朽化に限らず、洗濯機のホースが外れて水が溢れてしまった場合など、上階の専有部分が原因であれば上階の所有者(または居住者)の責任となります。

上階の所有者(または居住者)が賠償責任保険に加入していれば、あなたの部屋の復旧費用(クロス貼り替え、フローリング補修など)は上階の保険から支払ってもらえます

もし上階が保険に加入していなければ、あなたが加入している火災保険を使って復旧費用を支払うこともできます。

・上階のスラブ下配管に原因があった場合
スラブ下配管は共用部分になるため、その責任はマンション管理組合が負うことになります。

管理組合が責任を負うということは、復旧費用は管理組合が支払うということです。

一般的に管理組合はマンション共用部を対象とした保険に加入しているため、賠償責任保険を使ってあなたの部屋の復旧費用を支払うことになるでしょう。

また、上階の責任ではありませんので、上階の保険から支払われることはありません。
なお、繰り返しになりますがいずれの場合でも老朽化した横引管を補修する費用は保険では支払われません

スラブ下配管の場合、共用部分の横引管の補修・交換費用はマンション全体の修繕積立金等から支払うことになります。

特にスラブ下配管の横引管老朽化による漏水は、上下階から工事が必要になることもあり費用・工事による断水など負担が少なくありません。

これらのことから、自分が購入する中古マンションはどちらのタイプの横引管なのか把握しておくと良いでしょう。

まとめ

・排水管には共用部分(共用配管)と専有部分(横引管)がある。
・横引管にはスラブ上、スラブ下配管がある。
・スラブ下配管はスラブを境に責任範囲が異なり、一部は共用部分である。
・保険に加入することで復旧費用は支払われることが多い
・排水管本体の補修費用は保険では支払われないため、自己負担(個人または管理組合)となる


排水管から漏水があると経済的な負担もさることながら、トイレが使えない・浴室が使えない・キッチンが使えない、という日常生活に大きな制限が出できます。

補修が1-2日で終わればいいのですが、スラブ下配管の場合は上下階同日の工事が必要になることもあり復旧まで時間がかかることも…

だからこそ、中古マンションを購入する際には排水管の状態はしっかり確認しておきたいものです。

仲介会社経由で管理会社に確認をすれば、共用部分の修繕履歴から排水管更生・更新工事の有無が分かります。

また、スラブ下配管の横引管は共用部分であることから、修繕履歴の中に漏水復旧工事が多数記載されていることもあります。それをみれば、どの程度老朽化が進んでいるのか参考にあるでしょう。

これらの情報を読み取ることで、今後も安心して住み続けることができるのかどうか判断することができます。

数多くの中古マンションをみてきたからこそ分かるポイントがあります。
安心して長く住み続ける中古マンションを探している方はぜひご相談ください。