築40年の旧耐震マンションを検討しているが、いつまで住み続けられるのか不安~マンションの耐久性について~
新築は高い!
それなら中古でも見てみるか…

こっちもそんなに変わらないな…

(SUUMO掲載の写真を見て)おや!こんなに室内がキレイなのに安いぞ!!

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ふんふん、ふんふん、アッ!

1980年10月築って、築42年も経ってるよ…

という経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。

築年数が古くても立地が良いことや、室内はリノベーションされていてとてもキレイになっていること、何より価格が魅力的であるといえます。

色々考えたけど、なかなか踏ん切りがつかない。

そんな時に疑問に思うのが、「鉄筋コンクリートのマンションはいつまで住めるのだろうか?」ということではないでしょうか。

私がアドバイスを求められた際には、「100年以上は住めますから、安心していいですよ」と伝えてます。

そこで本稿では、鉄筋コンクリートは何年もつのか、その根拠について解説します。

現存する日本最古の鉄筋コンクリート建造物は?

実際に築100年超の建物があるものなのか、実例を探すことにしましょう。

現存するもっとも古い鉄筋コンクリートの建物は一体何年築なのでしょうか?

それは、横浜市中区の日本大通りに面して建つKN日本大通ビル(旧:横浜三井物産ビル)です。

今での現役のオフィスビルで、古さを感じさせません。

竣工は明治44年(1911年)8月とあります。

現在は2023年8月なので、なんと築112年です。

所有者であるKENコーポレーションのホームページによると

KN日本大通ビルは日本における鉄筋コンクリート技術の先駆者「遠藤於莵」が設計した1911年竣工の明治モダン建築を代表する歴史的建造物です。外観・エントランス・共用部など所々に歴史を感じさせる部分を残しつつ現代のオフィス環境に合うようにリニューアルが行われており、クラシックなデザインと歴史に裏打ちされる風格とイメージをここで営まれるビジネスに提供いたします。
各フロア、OAフロア・個別空調・機械警備設置済。共用部も男女トイレ別・給湯室も設置。当時の面影を残す手動扉式のエレベーターも利用が可能です。2007年3月、耐震補強工事も完了しております。

KENコーポレーション ホームページより
しっかりとメンテナンスを行い、建物の風格にあったデザインを打ち出すことで、物理的にも経済的にも建物が活用できることの実例と言えます。

鉄筋コンクリートの寿命は120年

国土交通省が平成25年9月26日にまとめた「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書の記載の一部です。

鉄筋コンクリートの耐用年数に関する研究がが4通り掲載されています。

この中では3つ目の「構造体としての鉄筋コンクリートの効用持続年数」が参考となります。

鉄筋コンクリートの耐用年数は概ね120-150年。

耐用年数とは、コンクリートの中性化速度を算定し、中性化が終わったときに耐用年数が尽きるという考え方です。

中性化と言われてもイメージしづらいものですが、木材であれば腐ってしまったらアブナイということが直感的に理解できます。

鉄筋コンクリートでいえば、コンクリート内部の鉄筋が内側からコンクリートを押し出してしまい、鉄筋が露出している状態(爆裂)がアブナイ状態だといえます。

爆裂する原因が中性化ということです。

なぜ中性化が起きるか、なぜ中性化すると爆裂が起きるのか、すごく簡単に言うと

①コンクリート表面のヒビや割れ目から水が浸入

②水分や空気によって鉄筋が錆びる(コンクリートの中性化)

③錆びた鉄筋が膨張する(体積が2倍以上に)

④鉄筋周辺のコンクリートが押し出され、爆裂する

ということ。

ここから言えることは、①を防ぐためにも定期的に外壁塗装工事などの大規模修繕工事を行うことが大切だということ。

築年数の古い中古マンションの購入を検討している方は大規模修繕工事の実施状況を確認すべき、というのはこういうことなんですね。

躯体と設備は別物!住宅設備や共用部分の耐用年数はどのくらいなの?

ここまでお読みいただけた方は、鉄筋コンクリートの建物としての耐久性についての不安は解消されたのではないでしょうか。

しかし、次の疑問としては、「住宅として住み続けるためには設備(給水、排水、ガス、エレベーターなど)の交換も必要になるのでは?」ということではないでしょうか?

いくら躯体(鉄筋コンクリート)が120年もつと言われても、住み続けるためには各種インフラ設備も使えなければ意味がありません。

その点でいえば、設備については更新周期は下記の通りです

給水管:30年

排水管:30年

エレベーター:30年

機械式駐車場:20年

玄関扉:25-30年

アルミサッシ:30-40年

バルコニー、廊下などの手すり:25-35年

外壁補修:10-15年

屋根防水補修:12-15年

発行:一般財団法人住宅金融普及協会 住まいの管理手帳(マンション編)より
このような補修工事を一定期間毎に行うことによって長い間住み続けることができると言えます。

一般的にマンションでは、これらの工事をいつ行うのか、工事にかかる費用はどの程度なのかを把握するため長期修繕計画を作成しています。

長期修繕計画では、支出についての見込みと合わせて収入についても記載されています。

現状のペースで積立をしていくことでも収支はマイナスにならないのかどうか、また、足りない場合にはいくらの値上げが必要になるのか、長期修繕計画を確認することで将来の姿が見えてきます。

耐久性は適正な修繕があってこそです。

長期的に住み続けることができるマンションの条件とは

ここまで見てきたことから、計画的に修繕することを続けられるのであれば、という条件付きで、築40年のマンションでもあと80年くらいは住み続けられる、と言えます。

そこで、長期的に住み続けることができるかどうか、という疑問についての回答としては、結局「お金次第」と言えます。

修繕積立金が不足している場合、値上げをするか借り入れをするか、どうにかしてお金を集めて修繕を行わないことには、いつかはインフラ設備が使えなくなります。

そのマンションには修繕積立金が稼げる力があるか、がポイントです。

「そこに住みたい人がいる」という需要があるかどうか、ともいえます。

住みたい人、とは自己使用に限りません。賃貸として借りて住みたい人も含めて考えてみてください。

毎月の修繕積立金が高くても賃貸需要(住みたい人)があれば賃料収入が見込めますので、築60年になっても売買取引の対象となります。つまり、資産価値がある物件だと言えます。

一方、住みたい人がいない(または少ない)と思われるマンションは将来心配です。

修繕にお金がかかる⇒修繕積立金が不足する⇒所有者がお金を払えない⇒売ろうとしても買い手がつかない、という悪循環になってしまいます。

みんなが住みたいと思えるマンションなんて言われても、将来のことは分かりません。

私が不動産業界で働き始めたころに先輩から教わった言葉があります。

やはり不動産はこういうことかもしれません。

1に立地、2に立地、3・4がなくて、5に立地