前回(昨日)の続きとなりますが、営業担当が売れそうにもない査定価格を提示しても意味がないのでは?という疑問について考えてみたいと思います。
不動産の売却を依頼する(媒介契約を締結する)と不動産会社はインターネット広告・新聞折込・チラシ配布など広告活動を行い買主を探して成約を目指します。
当然、それらの広告活動には費用がかかるのですが、広告費として売主に請求がくることはありません。
媒介契約の取り決めは、売れたときに報酬を支払うこと、です。つまり、成功報酬として売却を依頼していることになります。
売れなければ不動産会社はタダ働きになってしまうということです。
だったら尚更、売れない価格で依頼を受けても意味がないではないか!という声が聞こえてきそうです。
みなさまにはこの前提を知っていただいた上で、私の話を批判的な視点で聞いてもらいたいと思います。
不動産会社はあなたの物件を売ることだけが仕事ではありません!
不動産会社からみて、中古市場で収益を得る方法は2つのあります。
- 売りたい人の物件を売って、売主から仲介手数料を得る
- 買いたい人の要望にあった物件を紹介して、買主から仲介手数料を得る
あなたの家は高すぎて売れない、かもしれません。でも、あなたの家を広告で見て問い合わせをしてくれるお客様(買主候補)がいるかもしれません。
そのお客様はあなたの家は買わないでしょう。だって…高いんだからさ…
あなたの家の近くにあるもっと安い(安く見える)家を買ってくれたら、不動産会社は買主から仲介手数料を得られます。あなたの家をきっかけに収益が生まれるわけです。
また、ここ数年は都心部を中心にマンション価格がだいぶ上がりました。いま高いと思っても、そのうち市場価格が追い付いてくることもあります。
私が大手仲介会社で営業職として働き始めたとき、指導してくれた先輩はこんなことをいってくれました。
おれたちは個人店主の集まりだ。自分の店に品物が並んでいなければお客はこないぞ。
品物とは売り物件だ。
とにかく品揃えが大事だから売り物件を集めろ。集めた品をどう売るかは、あとで考えればいい。
引用元:先輩
個人店主の集まりとは、チームでノルマ達成を目指すのではなく個人成績で給与・賞与が決まることをいっています。集めた品をどう売るかは、あとで考えればいいとありますが、値段を下げてもらうよう粘り強く売主を説得することをいっています。
当時の私にはとても分かりやすい例え話でしたのでいまでも記憶に残っています。不動産仲介の基本です。
中古市場では値引き、値段交渉は当たり前!言い値で決まるのは人気エリア・希少物件か相当安い…
媒介契約の期間は3か月です。継続することもできますので、契約更新手続きを行います。その際、いまの価格で売れなければ価格を下げましょう、と営業担当から提案があるのが一般的です。
あなたがこの値段で売れると言ったじゃないか!と言いたくもなります。
嘘つき!おたくには任せられないからここで終わりだ!他の会社に依頼する!と言いたくもなるでしょう。でも、そういうことを言うお客様はほとんどいません。
しぶしぶ価格を下げるか、現状のまま頑張るか。どちらかを選択して引き続き同じ不動産会社で成約を目指すことになります。
営業担当の方が熱心にここまでやってくれて売れないんだから、おっしゃる通り値段を下げるよう。
土日に見学する人の対応で疲れてしまった。早く売りたいから言われた通りの価格に下げます。
と、いつかは売主が根負けして価格を下げることを不動産会社は知っているのです。
不思議と人は、売ると一度決めたら途中でやめることはしません。ゼロから始めるつもりで、不動産会社選定からやり直せばいいのに…
売れそうにない価格でも売りたい人を集めたい!だって商品がなければビジネスチャンスはゼロだもん…
商店街にある小さな個人商店のような不動産会社を見たことがあるかたも多いと思います。窓ガラス一面に不動産広告が掲載されています。
では、それらの物件は全てその個人商店が集めた物件(売りたい人)だと思いますか?
もちろん、違います。
他の会社が依頼を受けた売り物件を、自分の会社で広告することは認められています。
自分で売り物件を集められない会社は、他社から借りてきてまで品揃えを良く見せようとしています。
だって、商品がなければビジネスチャンスは生まれないんだから。