耐震補強

耐震が気になる方へ、これだけはチェックしよう!耐震診断結果のIs値とは?

一定の要件に該当する建物は耐震診断を行うことが法律で義務付けられています。

大きく分けると下記2つの種類です。

1.大規模建築物等(要緊急安全確認大規模建築物)
2.避難路沿道の建築物(要安全確認計画記載建築物)

1.は病院、店舗、旅館などの不特定多数の人が利用する建物や、公益上必要な病院、官公署、災害応急対策に必要な施設等をいいます。

2.は災害が発生した場合に避難路(緊急輸送道路等)として、自治体が指定した道路の建築物のうち、一定の高さ以上で、昭和56年5月31日以前に工事に着手したものをいいます。

中古マンションの購入を検討する際、特に旧耐震基準の物件を検討する場合には耐震性能が気になりますよね。


旧耐震基準のマンションだからといって全てのマンションで耐震診断を行うことが義務付けられているわけではありません。

マンションでは、上記2.のケースに該当する場合のみ義務付けられています。

そして、耐震診断を行った結果については自治体がホームページで公表しておりますので、誰でも確認することができます。

そこで、もしあなたが検討している中古マンションが旧耐震基準の物件であれば、これだけはチェックするべき、という項目やセルフチェックのやり方について解説します。

耐震診断が義務付けられている沿道・建物について

先ほどの2.の要件について再確認しましょう。

避難路(緊急輸送道路等)沿道の建物であること

一定の高さ以上の建物であること

両方の要件に当てはまる旧耐震基準のマンションは耐震診断が義務付けられており、かつ診断結果が公表されています。

1.については、いわゆる主要幹線道路です。詳細は各自治体のホームページに記載されています。

検討している中古マンションが大通り沿いであれば必ずチェックしましょう。

一方、住宅地の中にあって、前面道路幅員が6-8mくらいの道路は該当しない可能性が高いです。

2.については、前面道路幅員によって計算方法が異なります。

建物の高さが6mを超えると該当する可能性がありますので要チェックです。

よくある勘違いとして、1.の要件に該当する(緊急輸送道路沿い)から耐震診断が義務付けられている、と思っている人がいます。

それに加えて「2.の要件」があること、そして「2.の計算」によっては対象外になることがあります。

以前、物件を検討しているお客様の依頼があって調べたところ、東京都で地上10階建てのマンションにもかかわらず、耐震診断の実施義務がありませんでした。

繰り返しになりますが、1.2.に該当する場合は耐震診断が義務付けられていることになりますので必ず確認しましょう。

耐震診断結果の見方、確認方法とは?

耐震診断結果についても自治体ホームページに公開されていますので誰でも確認できます。

紛らわしいのは公開している所管行政庁が分かれているケースです。

例えば神奈川県では、横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、秦野市、厚木市及び大和市は各市が公開しており、それ以外は神奈川県のホームページで公開されています。

東京都も同じように、建物の規模等によって管轄が都なのか区なのか異なりますので、両方のホームページを確認するのが確実です。

耐震診断結果については3段階で評価されています。

Ⅰ.大規模の地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が高い。
Ⅱ.大規模の地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性がある。
Ⅲ.大規模の地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が低い。

危険性が「高い>ある>低い」という3段階になります。

このうち、ⅠとⅡは新耐震基準を満たさない建物ということになります。

(結果報告書の中で、今後の対応について記載されている場合もあります。)

かなり大雑把な3分類に分けていますが、その根拠としているのは主に耐震診断結果のIs値と呼ばれている数値です。

診断結果は複数の評価指標で判定していますが、Is値によって概ね下記のような分類になります。

Is値0.3未満=Ⅰ(危険性が高い)

Is値0.6以上=Ⅲ(危険性が低い)=新耐震基準

上記以外=Ⅱ(危険性がある)

なお、旧耐震基準の建物を耐震補強工事でIs値を0.6以上にすることにより新耐震基準に合致することになります。

(各自治体が耐震補強工事費用の助成を行っておりますが、そこでもIs値0.6以上とすることが要件となっています。)

建物が新耐震基準に適合している場合にはマンションエントランスに下記のシールが貼られているので一目で分かります。(自治体によって異なります)

耐震診断が義務付けられていないマンションの耐震診断について

ここまで見てきたのは、「耐震診断が義務付けられている」、「自治体が公表している結果」についてです。

多くのマンションは緊急輸送道路等の沿道には建っておらず、耐震診断が義務付けられていません(努力義務)。

それでは、そのようなマンションでは耐震診断が行われているのかどうかは、どのようにして確認すればいいのでしょうか?

それは、管理会社に確認することです。耐震診断を実施しているかどうか、実施している場合は耐震診断結果報告書の閲覧ができる場合もあります。

なお、これらの情報は不動産売買契約の前に行われる重要事項説明書の中でも必ず記載される内容です。

一般的には中古マンションを検討している段階でお客様自身が管理会社に直接問い合わせをすることは難しいため、仲介会社を通じて耐震診断の有無を確認しましょう。

耐震診断の有無を問い合わせたところ、実施有り、と回答が得られたときは、耐震診断結果報告書を確認します。

耐震診断結果報告書とは、先ほど見てきた自治体が公表しているものとは書式等が全く異なります。

(危険度が3分類に分けられているわけでもありません)

そこで必要になる知識が、先ほど少し説明したIs値です。

耐震診断結果報告書には必ず各階毎のIs値が記載されています。

耐震診断結果

新耐震基準かどうかは、Is値が0.6以上であればOK、0.6未満であればNGですのですべての階のIs値が0.6以上であるか確認します。

もし1フロアーでも0.6を下回っていれば旧耐震基準のマンションになります。

(住宅ローン控除など各種税制優遇は受けられません)

自治体が公表している3分類では、Is値が0.3未満だと危険度が一番高い「Ⅰ」に分類されます。

それを参考に考えれば、各階のIs値が0.3未満かどうかというのは大事なチェックポイントといえます。

とはいえ、実際には各階でIs値がバラバラなことが多く、10階建ての建物で、8階から10階は0.6以上、1階と3階は0.25で、あとは0.4~0.5の間、というように、どう判断していいのか分からないことが少なくありません。

耐震性能と住宅ローンについて

一部の金融機関では新耐震基準の物件のみ住宅ローンを取り扱っております。

それでも、そのような金融機関はまだまだ少数派で、旧耐震基準の物件についても最長35年の住宅ローンが使える金融機関は多くあります。

旧耐震か新耐震にかかわらず住宅ローンが使える、という認識で問題ないのですが1点だけ注意が必要です。

それが、冒頭で説明した「耐震診断が義務付けられている」、かつ「耐震診断結果がⅠまたはⅡ」であるマンションの場合です。

この場合、金融機関によっては取り扱いができないことがあります。

(個人的な感覚では、少なくない金融機関で取り扱い不可です)

周辺の物件に比べて妙に安いな、と思ったら、旧耐震基準で耐震診断が義務付けられており、結果が悪いため住宅ローンが使えない物件だった、ということもあります。

もしあなたが現金で購入するなら問題はありませんが、売却するときには住宅ローンが使えない物件ということで評価が低いということは頭の片隅に置いておいてください。

まとめ

旧耐震基準のマンションを検討される方が最も気にするのが耐震性能だと思います。

耐震診断を行っているのであれば客観的な評価が数値化されており、判断する際には有効な判断材料になります。

自治体が義務付けている場合には、検索サイトで「マンション名+耐震診断結果」と検索すれば高い割合で、上位に自治体のホームページ、PDFがヒットするはずです。

ひと手間を惜しまずご自身で確認されることをおすすめします。

一方、多くのマンションでは耐震診断が実施されておりません。

検索サイトで検索しても耐震性能については参考になる情報が得られません。

そのようなマンションでも複数の情報を掛け合わせることで、危険度が高いのかどうかは判断ができます。

(とても長くなるのでその方法にについてはここでは触れません)

マイホームは一生に一度の大きな買い物です。

しっかり事前準備をすることにより、後悔のないマイホーム購入ができます。

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